2009年7月27日 (火)

どろどろ血

真夏のスポーツや運動は、そのやり方をひとつ間違えると命にもかかわるリスキーなものです。なぜかというと、汗をかくことで、水分を失い、その量が多量に往々にしてなってしまうからです。運動を行うには栄養素から力のエネルギーを取り出す必要がありますが、この栄養素を100%力に変換すればよいのですが、そうはいきません。同時に熱が発生してしまいます。激しい運動時には安静時の10~20倍もの熱が発生し、体温が3~4℃上昇してしまいます。その放熱のために発汗し、体温の調節を行います。
 夏に運動していた中学生が脳梗塞になったというマスコミ報道がありましたが「最近の子どもは老化したものだ。そんな年齢で成人病になるのか」ということは出来ません。血液が濃縮してドロドロになれば、年齢に関係なく梗塞が起こる可能性があるからです。  高齢者が夏に行う農作業の途中やその直後に、心筋梗塞や脳梗塞を起こす例はかなりの頻度で見られます。直感的には老化による動脈硬化がもとでと了解してしまいますが、もし、その際に十分な水分補給を行えば、無事にその日の作業は終えたかもしれません。
 貧血を説明するには「血液が薄くなっている」と表現する場合がありますが、血液の濃縮はその逆で「血液が異常に濃くなってドロドロしている」状態です。このような血液は粘っこく、血管の中を流れにくいので、脳や心臓の細い血管では詰まってしまいます。昔は「運動中に水分を摂ってはいけない」と強調されました。理由としては水を飲んでもすぐに汗として出て体力を消耗させるだけだという理由でしたが、最近は水分を補給しながら走るマラソン選手やサッカー選手の姿をTVで見るようになり、間違いが正されるようになqりました。
 私たちのからだは細胞がたくさん集まって出来ています。皮膚という革袋に細胞を浮かべているという構図です。細胞の栄養分は水に溶けて細胞外から取り入れしていると同時に、不必要な代謝物は同じ水の中に出ていきます。このように生命活動はすべて水の中で行われているのです。
 夏に運動や労働を行う場合には、身体の中の水が干上がらないように気をつけたいものです。

2009年8月26日 (月)

うつ病にならないためには

 うつ病は決して珍しい病気ではありません。米国の調査では実に6人に1人は生涯のうち一度はうつ病に罹るといわれております。うつ病の症状は抑うつ気分と意欲の低下です。したがって気分が沈み何をするにも億劫になる、今まで大好きだった趣味や仕事が楽しめなくなる、よく眠れない、とくに眠りが浅く夜中に何度粒も目を覚ます、空腹感がなくなり、食欲が低下するなど現れたら、あなたqの心が発する「うつのシグナル」かもしれません。 では、日頃からうつ病を予防するためにはどのような心がけがあるのでしょうか。
1.人間関係を大切にすると同時に自分だけの時間をもつ。
 心の健康を保つためには周囲のヒトと良好な関係を持つことは大切ですが、うつ病になりやすいヒトではしばしば他者に対する配慮に必要以上のエネルギーを注ぎ、すっかり疲れ切ってしまう状況が生じます。ときどきは自分自身と対話できるような自分だけの時間を持つことが必要かもしれません。
2.いつも全力投球をしない。
 うつ病になりやすいヒトではいつも全力投球をしてしまいがちです。仕事などを他人任せにしない態度は立派ですが、絶対自分自身がしなければならない仕事は何か、むしろ部下に任せた方がよい仕事はないかなどよく考えてください。
3.日常生活を忙しくしない。
 とにかく忙しくしていると、自分の価値が上がったような感じにとらわれていませんか。何の仕事をするかということよりも、スケジュールを埋めるのが目的化してしまうヒトがおります。「忙しそうですね」という言葉は中年男性への最高のほめ言葉と勘違いしていませんか。
4.何が大事で何が手を抜けるか。
 「一人で」」すべてを」「完全に」こなそうとする傾向はありませんか。こういう人に限って「全部必要だ」という答えがしばしば返ってきますが、こういう人は「うつ病候補生」といえます。
5.無駄な時間を無為に過ごす。
 何らかの活動ですべての時間を埋め尽くさないと不安になってしまったり、怠惰になってしまったと自分を責めるヒトがおりますが、ポッカリ空いた時間は近所の公園を散歩したり、四季の移り変わりを眺めたり、周囲のヒトを観察したりといった余裕を持ちましょう。
6.人生には努力しても出来ないことがある。
 誤解を招きやすい言葉ですが、うつ病の発病年齢である中年期のヒトにとっては、自己の限界を知ることが中心的課題です。若い頃なら試行錯誤も許されますし、努力すれば結果はついてくるとの思いも強かったと思います。中年になっても若い頃の姿勢を貫きどうして成功する人もいるでしょうが、そろそろ自己の限界を見定めるといった諦観も重要です。
7.説明のつかない身体や不眠が長く続くときは専門医に相談する。
 気分が沈む、仕事の能率が落ちる、注意が集中できない、決断が出来ないといった症状が続くときはうつ病と結びつきます。早期の段階で、診断と適切な治療を受けてください。 うつ病は治療可能な病気です。

2009年9月20日 (土)

睡眠薬の安全性

 「医者から睡眠薬を処方されて飲用してますが、ずっと飲用を続けてもOKでしょうか」こういう質問はよく受けます。
 睡眠薬というとクセになる、止められなくなると思われがちで、何となく不安な気持ちを抱く方が多いと思います。しかし、現在汎用されているベンゾジアゼピン系やこれと類似する作用をもつ睡眠薬は、正しくは睡眠導入剤と呼ばれ、安全性は高く、医師の指示に従って使う限りは、クセになるという問題はほとんど起こりません。飲まれて調子がよいのであれば安心して指示通り飲むことをお薦めいたします。
 一口に眠れないといってもその理由は多様で、たとえば不安・緊張、ストレスなどの精神的な問題や、痒み、痛みなどの身体的な症状がよく知られていますが、これにはまず原因を取り除きます。また、夜はよく眠れないが、昼寝はたっぷりという方は、昼寝の代わりに身体をよく動かし、夜眠れるようにするといった工夫も大事です。
 ただ、いくら工夫しても眠れない状態が続く限りは、日常生活にさまざまな影響を及ぼすことになり、睡眠薬の力を借りて快適な生活を取り戻すことが先決となります。
 睡眠導入剤は脳の中の主に感情を支配している部分に働き、不安や緊張を和らげ、その人本来の睡眠を取り戻すとされています。精神活動に関与する大脳皮質や呼吸を管理する延髄などにはほとんど作用せず、意識が変調したり、呼吸が抑制されるといった副作用はほとんどありません。したがって、普通に使っている限りではくすりが効かなくなる耐性や、クセになるといった依存性といった問題はまずありません。
 睡眠薬を止めるときには量を徐々に減らしたり、短時間の睡眠薬を長時間タイプに切り替えるとぴった工夫が必要になりますが、医師の指示に従ってください。
 問題となるのは自分の判断で勝手にクスリを飲んだり、飲まなくなったり、急にクスリを止めるといったことで、一時的に眠れなくなることがありますから、睡眠薬の注意点については医師や薬剤師に相談して確認し、正しく使ってください。

2006年6月 9日 (金)

ご存じですかアトピービジネス

 アトピー性皮ふ炎は自然治癒傾向の見られる病気で、かつてはそれほど治りにくい皮膚病とは見られておりませんでしたが、しかし、現在ほどアトピー性皮膚炎を巡る情報が混乱しているときはありませんでした。現在ではアトピー性皮ふ炎を著しく悪化させた結果、社会生活からドロップアウトしてしまう患者が急増しております。
 アトピー性皮ふ炎を巡る社会的混乱の要因として、「アトピービジネス」を考えなければなりません。アトピー性皮膚炎を対象とした医療保険診療のほかの行為によって、治療に関与し、営利を追求する経済活動はアトピービジネスと呼ばれております。
 それには、健康食品、化粧品、温泉入浴療法、水治療、エステ、または医療機関による特殊療法などさまざまなものが含まれております。
 それではアトピービジネスと民間療法はどう違うのでしょうか。民間療法は「お年寄りの知恵」「生活の中から生まれた工夫」といった善意のアドバイスでしたが、今日の民間療法は営利を目的としたビジネスであるというのがその本質です。いかほど費やしたかといいますと一人平均200万円という数字があります。
 アトピービジネスでその効果が立証されているのはほとんど皆無で、自然軽快例と思われる例を体験談として紹介する、悪化した例はすべてステロイド外用剤の副作用としてしまうなどアトピー性皮ふ炎患者を正しい保険診療から遠ざけてしまいます。一方では隠れたステロイド剤を併用して、「奇跡の○○療法」などに変身してしまうなどの企業戦略をとっております。その勧誘はさまざまな企業戦略を用い治療法について書籍を出版し、「グングンよくなる○○療法」などといって宣伝する、アトピー性皮膚炎の患者団体と思わせるような組織を窓口として勧誘する。医療機関とタイアップしているかのように装い勧誘するなど手口は巧妙です。
 さらに、ステロイド外用剤の副作用を誇張し、正しい治療から患者を遠ざけ必要以上にアトピー性皮ふ炎は治りにくい皮膚炎だと思い込ませるのがこのアトピービジネスの根幹といえます。
 アトピー性皮ふ炎を克服するには信頼できる主治医と投薬する薬剤師とが正しい理解をもとにじっくりつきあうのが重要といえます。決してアトピー性皮ふ炎は治りにくい皮膚炎ではありません。 

2009年10月 7日 (水)

若はげの予防とケア

 若はげは壮年期脱毛と呼ばれ思春期を過ぎた頃より徐々に男性に起こります。症状は前頭部から頭頂部にかけて毛包がミニチュア化し太長い硬毛が細短い軟毛へと変化することです。そのため髪が薄くなったように見えますが毛包数は減っていません。
 これらは男性ホルモンの感受性が高く、ホルモン作用が強く出る結果、若はげが現れ、一方顎髭や胸毛は非常に濃くなる逆の現象が起こるわけです。この感受性の高さはある程度遺伝的素因で決まっているようです。
 若はげのヒトの頭皮は皮脂が多く湿潤度も高く、ふけが多いので、毛包の出口に厚く固着しがちで、物理的にも毛髪の伸長も妨げます。シャワーで毛髪を洗い汗や汚れを取ることは制限はありません。シャンプー洗髪は2~3日に一度で十分です。洗い過ぎやシャンプーの不十分なすすぎは頭髪を障害します。頭皮の血流が低下しますと脱毛を助長しますので、塩化カプロニムム、スエルチノーゲンなどは局所の血流を拡張させますので頭皮のマッサージと併用すると効果的です。
 本来育毛剤の目的は直接毛根部に働き
1.毛母細胞の増殖を促進する。
2.毛包成長期を延長する
3.軟毛を硬毛に変える
4.男性ホルモンの作用を弱めて、進行を防止する
の4つの作用を持ち、ヘアサイクルを正常化させるものと考えられています。この全部の効能をもつ製品は少なく99年に発売されたミノキシジル製剤には
1.毛母細胞の増殖
2.毛包成長期を延ばす
3.軟毛の硬毛化作用が見られるといいます。
 アメリカで臨床試験が行われたプロベシアは抗若はげ薬の内服剤として認可されましたが、ただし、男らしさがなくなるという欠点を持っています。わが国でも発売が認可されました。
 育毛剤は長期連用されるにもかかわらず、比較的高価ですので評価を厳しくする必要があります。効果判定の目安はヘアサイクルの期間を考慮して、3~6ヵ月とし
1.抜け毛が減る
2.髪の腰が強くなる
3.軟毛が太くなるなどの変化の有無で行うようにします。 

 
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